清代回疆社会経済史研究/堀直

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9784872597462内容紹介18〜19世紀に「回疆」と呼ばれた新疆ウイグル自治区南部のオアシス社会。ユーラシア大陸の最奥地に生きた人々の暮らしや経済を解き明かす。17世紀後半以降の政治・経済のグローバル化の進展は、西欧・ロシア列強と東方の清朝中国の覇権拡大をもたらした。かつては国際通商路「シルクロード」の大動脈が走っていたユーラシア大陸の内奥部分=中央アジアは、西からロシア帝国、東から清帝国の進出・侵略をうけ、18〜19世紀に両帝国によって分割支配され、中央アジア地域の多様な民族集団もまた近代的な国境によって分断された。天山山脈の南北地域は、18世紀後半以降、清の支配下で「新疆」すなわち「新たな領域」として特別な位置づけを与えられた。新疆の南部、タリム盆地周縁のオアシス地域で人口の大多数を占めていたトルコ系イスラーム教徒(現在のウイグル族)も、言語・宗教や支配理念・政治・社会構造を異にする清帝国の支配に服し、彼らの居住地域は「回疆」と総称されるようになった。本書は、漢文史書類のみならず、テュルク語・満洲語などの多様な一次史料や現地調査の成果を中心に据えて、清朝支配下の「回疆」の社会・経済の実像を精緻に描き出す。中国政府の新疆ウイグル自治区統治政策が国際的に注視されている今日、その前史としての清朝支配下の社会を理解することで、単なる民族/宗教の対立あるいは多民族国家の成立といった表層的な理解を超え、現代に直結する当地の歴史展開を本質的に把握しようとするものである。本書の内容第一部では、交通・貨幣・官僚・徴税といった清朝の回疆統治制度の運用実態を明らかにする。ヤルカンド=オアシスの徴税台帳『大木文書』の内容を詳細に紹介・考察し、現地ムスリム官僚(ベク)約50名ほぼすべての人物比定を行う。第二部では、砂漠に囲まれた回疆オアシス社会の存立に不可欠の灌漑農業とそれを支える水利システムの実態解明に挑む。農村社会と水利行政・ネットワークとの関係やオアシスの耕地面積の拡大過程を実証し、地下水路カーレーズやトウモロコシ(玉米)といった新たな技術や作物の回疆社会への導入と拡大要因を明らかにする。第三部では、主要都市のヤルカンドとカシュガルを取り上げ、回疆社会の政治・経済・文化の中心であったオアシス都市の構造・施設・機能を復原する。近年の大規模な都市開発によって街区・街路等の構造が大幅に変更されてしまった今日においては、本書で提示される1980年代後半〜2000年代前半の現地データ自体が歴史的な価値を有する。第四部では、チャガタイ語(アラビア文字東テュルク語)、満洲語、そして漢文で記された一次史料を基に、回疆社会に生きた人々の生活の一断面を垣間見る。現地ムスリムたちが犯した殺人事件の数々や、金銭トラブル・男女の痴情のもつれ等、日常の中の様々な事件を通じて一般民衆の生き様が活写される。さらに史料研究に関わる補論として、『大木文書』の作成年次を咸豊5年秋から咸豊6年…※本データはこの商品が発売された時点の情報です。

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